昨日はこいつのために一日中気もそぞろであった。
「お父さん,ココおれへんねんけど・・・。」
「そんなことないやろ。またどこかに隠れてるんやて。」
ネコの家出?
家内は毎朝むすこのために,弁当を作る。
定番はツナと塩昆布のおにぎりで,パカンと缶を開ける音でココは必ず走り寄ってくる。
もちろんおすそ分けをもらうためである。
それが今朝は来ないし,姿も見ないとのこと。
家中を探すが確かにいない。
大阪南部の海辺の町に我が家(マンション)はある。
田舎と都会が交じり合っているようなところで,市内にも40分ほどで行けるし,住むには困らない。
海辺は公園化されていて美しく,海水浴,釣りもできる。
もともと下町育ちの自分が気に入った町だ。
ただ,家族はここに住んでいるが,私は6年ぶりに戻り,猫のココはそのときに連れてきたので新参者ではある。
まだ来て2ヶ月くらいのものか?
連れて来たときには,テレビラックの裏に隠れて出てこなかった。
それが三日もしないうちにすっかり家族にもなつき,わがもの顔にすごしている。
2週間後に私が引っ越してきてしばらくは,私がいるとラックの裏から出てこない・・・・・。
家中の笑いを買うこととなった。
娘に押しつけられて6年も一緒に住んでいたのに。薄情なやつだ。
家内やむすこがいると出てくる。
猫はもともと犬と違い独立心が強いものだが,
それであるなら他のものに対してもその気概を見せろよ。
エサで買収されやがって・・・
少し寂しい。
そんな彼女ではあるが,やはり出ていったようだ。
いない。
犬のソラ
実は我が家にはもう一匹家族がいる。
老犬である。
16歳だから人間にすると93歳のおばあちゃんで目もよく見えなくなっていて,足もなえてきている。
むすこが小学生1年のときに家の金を持ち出し,ペットショップで犬を買ってきたことがあり,(この時はさすがに後でペットショップから電話がありお返しした。)
それほど欲しいならと,知り合いのツテでいただいたスピッツのミックスで,むすことは兄弟といえるほど今も仲が良い。
老犬だけに頭もボケてきて,下も垂れ流しになるので廊下の所々に御不浄をする。
その都度拭くのだが一晩すると歩けなくなるほどになるので,毎日2回モップできれいに拭き掃除をする。
このときに換気のため玄関のドアを開放する。
開け放たれたドアをトコトコと,ココは出て行ったようだ。
「お父さんが開けっ放しにしているから。」
完全に悪者になってしまった。
家族の視線が痛い。💦
お出かけ
ココは外に出たことがない。完全な家ネコだ。
以前住んでいた西成で一度脱走したことがあり,あわてて探しに階段を下りて行ったところ,
玄関脇で震えていた。
そのことがあったのですっかり安心していた。
ちょうど発情期に入っていたからか?
家ネコは基本的にヒビリである。
特にココはエサを食べるときでも初めてのものは,においを嗅ぎ少しだけなめて,
それでも食べないことがよくある。
いくら発情期とはいえ遠くまで行くことはあるまい。
しかも昨夜は強い雨だった。
いざ捜索隊出動!
自分が猫になったつもりで,階段伝いに降りていく。
正面はイベント等ができるほど広い石畳みのスペースなので,そちらにはいかないだろう。
とすれば裏側か?
私が住んでいるマンションは,駅付近にある敷地イコール高層マンションではない。
広い敷地に5棟ビルが建っていて高いのは24階建てのタワーマンションで,
各所に樹木や低木が植えられていて,公園のようになっている。
私はそこの5階建ての低層マンションに住む。
低層なのだが,ピラミッドのようにすそが広い。
というか地中海の小山にある群集した家屋のような造りになっている。
そのうえ,プライバシーに配慮した構造とかで,各部屋の導線が分かれていて非常にわかりにくく,
入居時には私たちも何度か迷子になった。
普段なら居心地が良い環境といえるが,迷子のネコの探索となると逆となる。
何しろ1階の各居室にはすべて庭がついていて,仕切りが金属ゲージを隠すように植物がびっしり植えられている。
つまり小動物が身を隠すところだらけで,目星がつかない。
かたっぱしから中腰になり「ココー,ココー?」と呼びながら探すのだが,他人の庭先だけに念入りには探せない。
住人と目が合うと聞かれてもいないのに,
「こんにちは。〇〇号室のしんしんです。ネコを探しています。ははは。」💦
と言って通り過ぎる。
空き巣狙いと思われない程度の速さで,呼びかけながら探す。
1周するだけで30分もかかってしまった。
やはりいない・・・・・。
仕事に行ったむすこから家内に電話があったようだ。
ソラが気になるので,玄関は閉めておいてくれとのこと。
93歳のおばあちゃんには無理やて(^-^;
どうしたものか?
1時間おきに4回探したところで,考え込んでしまった。
魅力ある颯爽としたオスネコについて行ったのか?
「いや,西成と違ってこの辺にノラ猫はいない。」
誰かに保護されたか?
「いや,飼い主にさえ爪を立てるやつが,他人に抱かせるはずはない。」
死んだか?
「・・・・・💦 いや,そのためにわざわざ外には出んやろ。クローゼットとか隠れるところはたくさんあるし。」
毎日清掃しているおばちゃんや管理事務所に聞いて廻ったが,良報はない。
どうする?保健所に照会するか?
「昨日の今日で通報されたとしても,すぐには保健所も来ないやろ。」
結局,名案も浮かばないので,ネットで調べてみた。
ネコの行動範囲
メスに比べオスは発情期の行動もあり広いようだ。
メスはそれほど移動しないみたい。
ノラネコ
おす
500メートルから1キロ
めす
100~500メートル
家ネコ
おす
50メートルから100メートル
めす
50メートル程度
ヘンゼルとグレーテル【パンくずうんこ大作戦】
わかったことは,家ネコのメスは
ということであった。
もう手がないので,これにすがることとした。
とにかく,人も迷う迷路のようなこのマンションで字も読めないネコが帰って来れるとすれば,
「匂い」のみである。
猫トイレから砂を少量,キッチンの排水口に使う「生ごみネット」に入れて縛り,
一番近い4階の廊下や階段の踊り場の隅に置いていき,
玄関ドア前には猫トイレそのものを置いた。
日没後に1時間おきに巡回することとした。
- 猫トイレからうんこや砂を,生ごみネットにいれて縛る。8個
- 玄関ドア前に 猫トイレ を置く。
- 一番近い廊下や階段の踊り場の隅に置いていく。
- 1時間ごとに巡回する。
お帰り❤
とりあえず,風呂に入り,ちゃっちゃと簡単な夕食を作っていたところ(本拠に帰ってからは私が作っている),風呂から出た家内の叫び声が
「ニャーいうてる!にゃーいうてる!
鳴いてるぅ!早う!早うドア開けて!!
わたし裸やから!早う!!!」
ドアを開けると,弾丸のように茶色いものが飛び込んできた。
ココである。
匂いを伝って帰りつき,ドアの前の自分のトイレで確信したのであろう。
ネコの嗅覚恐るべし!
さすがに身体は汚れ,顔つきもキツイ。
帰るなり水をたっぷりと飲み,所定の位置に行くと一度大きく伸びをして,背を丸くして寝てしまった。
疲れていたのであろう。
その寝すがたは,警戒心もない。
我が家に帰ったという安心感に包まれている。
その日家族は宴会となった。
家内の一言。
お父さん,においの袋今晩回収してね。
はいはい。