つぶやき

ねこのココ チンチラゴールデンペルシャとの思い出 エッセイ

墓参りに猫と出会う男

ペットの死というものについて,これまで深く考えていたことはありませんでした。

 生きものである限りかならず死ぬものですし,人間に比べ短命なのでまず飼い主より先に逝く。

 人間もまた例外はないので死ぬわけなんですが,人の死とペットの死では感覚的に違うような気がしていました。

先日,8年一緒にいた猫が死にました。

 それからふた月経ったので,忘れてもいいような気がします。

ですが,こころの根っこがさびしいのでしょう。

 何かのおりにふと思い出します。

特に家にいるとひんぱんに...。

 なかなか記憶が薄れてくれないので,いっそのこと書き残しておこうと思います。

ねこのココ

うちで飼っていた猫が死にました。

飼っていたというか,一緒に暮らしていた猫が逝ってしまったのです。

 13歳でサカリもまだあり元気にしていたのに,ある朝ぐったりとしていました。

 「ケモノは体調が悪いとうずくまり,背を丸くする。

そして何も食べず,ひたすら回復するまで寝続ける。」

そういうことを聞いてきましたし,実際私の周りの生き物たちとの経験で知っていました。

 でも,その日は違いました。あきらかに様子がおかしい。

 右前足を前に突き出し,

体が伸びきった状態で,力なく横になったまま。

呼吸で波打つ腹の動きも,かすかに動くほどに弱い。 

 話しかけても,さすっても反応がにぶいのです。

その日,私はどうしても外せない仕事があり,家内にまかせて一度職場に行きました。

 できるだけ引き継いで休みをとり,急いで夕方に戻ってきたときも同じ様子だったのです。

家内に聞いたところ

水も飲まず,排尿もないとのこと。

 息をしているのでさえよくわからず,わずかにおなかが動いていることで生きていることが確認できました。

 どう考えても尋常じゃない。

 これまでこれほど具合の悪かったことは,ありませんでした。

「おい冗談やろ?ココ,ココ」

と口から出そうになる。

 段ボール箱にタオルをしき,そっと寝かせて近くの獣医に連れて行きました。

フクロウのような子猫

フクロウのような子猫

もとは娘の猫でした。

一人暮らしを始めたとたんに,ペットショップで購入したようです。

 値段を聞いても高かったとしか言いません。

ペルシアンチンチラ種のメスの子猫。

 自分が稼いだ金で買ったのだから,文句は毛頭ありません。

 初めて見たときには猫には見えませんでした。

 長い毛におおわれ,大きな眼だけが目立つので,

フクロウのひなのように見えたのです。

 それから数年して娘は結婚し,ペット厳禁の公団住宅に引っ越すこととなりました。

そのタイミングで私は彼女を押しつけられることとなったのです。

 そのころ私は単身赴任で,大阪市西成区の古い賃貸マンションに住んでいて,そこでもペット飼育は禁止。

 ただ,築数十年の古くて狭いマンションなので,クレームが来ても大したことはなかろうとやむなく引き受けたわけです。

 

同棲のはじまり

同居する猫

最初の出会いから何年もたっていて,再会したときにはすっかり成長していました。

 もう子猫ではありません。

フクロウでもなく,どこから見ても立派なねこです。

 青い目をしたブラウンの

毛長ガウンをまとった素敵なレディ。

 前足を立てその場に座っていると,とても優雅で品よく上品な洋猫に見えます。

 実際高かったのでしょう。

一度大きなペットショップで見に行ったことがあります。

2,30万くらいかな?

 しっぽが長く,毛も長い。ふさふさとしてチンチラの毛皮のようです。

 ただ,動くととても不細工。

 見た目と裏腹にのそのそ歩いて,後ろから見るとまるでタヌキです。

 運動神経がそれほど良くはなくて,けっして美声とはいえないシャガレ声でした。

箱入り娘

私にはまったくなつかず,さわろうものなら鋭い爪で一閃。

 浅くても傷から血がしたたります。

 狭い1DKの部屋でお互い干渉することのない同居を続けていましたが,

同じ場所に住んでいるだけにどうしても接触はあります。

さすがにいつのころからか,馴染んできました。

 彼女は皿の前で「にゃー」と鳴き,じっとこちらを見つめ続けます。

猫の目

彼女は決して目をそらさない。

 険悪な状況のときでも見つめ続けます。

 野生の動物は生まれて育っていく過程で,様々なことを学んでいきます。

 目線を合わせるというのは,喧嘩を売っているのと同じことで

野良の世界なら半殺し,下手をすれば大けがの目にあうのは間違いありません。

 私の住んでいた西成区は本当の下町で,ノラ猫が今もとても多いところです。

きれいな三毛猫や黒猫もいます。

 ですが,よく見ると10匹に1匹は片目だったり,耳が半分なかったり,しっぽが短くなっています。

 ネコには猫の生存の掟があるのでしょう。

 生まれた時から外の世界へ行くこともなく,

ましてや同族の猫とさえ生活したことのない箱入り娘では

学ぶこともなかったわけで,それも仕方のないことかも知れないですね・・・。

愛の口づけ?

日中は仕事に行くので,私はいません。日によっては帰りが夜中だったりもします。

 だから,彼女はほとんどひとり?です。

 さすがに食べるものはなくならないように気をつけていますが,たまに忘れることもある。

 酔っぱらってそれに気づかず寝てしまうと,

口をなめて起こすのです。

そんなことを教えた覚えはありません。

「おなかがへったときには,私の口をなめて起こすのだよ。」

としつける方法があれば,逆に知りたいものです。

 本にすればベストセラーになるかも。

いくらどん感な私でも,ご飯を欲しがっていることに気づきますよね。

「人間の口をなめる。」

 それは彼女が人間族との文化交流のなかで,

おのずと編み出した意思伝達の方法なのでしょう。

 ついては・・・

キスをする猫

私を愛しているからではありません。

ねこの変なくせ

私はそれほど几帳面ではないですが、食事と水の器もそれぞれ用意して,空になることのないよう気をつけています。

 トイレの始末も毎日しています。

そうした同居を続けていると,彼女の性格もわかってきました。

 彼女には変な癖があります。

灰皿の水を飲むネコ

 私はヘビースモーカーなので,吸いガラの火を消すために灰皿をふたつ使っています。

大ぶりのガラスの灰皿と小ぶりな大理石の灰皿に水をはり,テーブルに置いているのです。

 吸い終わるとこの水で火を消して,大灰皿に捨てる。

灰皿

 この灰皿の水を彼女は好んで飲むのです。

 最初に言いましたが,飲食の器は3メートルと離れていないキッチンの床に置いています。

 初めて見たときには大慌てで叱りました。

 タバコの葉には毒があるのです。10本も食うと,人間でも重体になる。

 といってもそこに吸いガラを入れっぱなしすることはなく,火を消すときにだけ漬けるので毒はほとんど移ることはありません。

どちらかというと灰が水に混じる程度です。

灰皿の水を飲む猫にビックリ

 はじめのころは叱り続けていたが,しょっちゅうのことなのでそれをすることもなくなりました。

 飲料水は飲料水で飲んでいます。

なんで,そんなことするんだろう?

 どうも,し好の問題のような気がします。

アルカリ性の水は美味いのでしょうか?

 それとも体内の毛玉をとるために,飲むのでしょうか?

謎は解けていません。

食べ物にとても用心深い

喜ぶだろうと思って買ってきた魚のさしみ,煮干しなどは食べません。

しばらくにおいを嗅いだり舐めたりするのですが,結局食わない。

 腹は立ちますが生まれてこのかた,キャットフードしか食べてこなかったせいでしょうか?

 ぜいたくな猫です。

 そのかわり,甘いものには目がありません。

 モンブランショートケーキのクリームなぞを指につけて,彼女の鼻先にもっていくと夢中になります。

 がっついて噛みつくようなことはなく,舌で味わうようにいつまでも指を舐めています。

 指を離すと,満足して舌なめずりをする。

追加をせがむことはありません。

 舌で口の周りを何回かなめた後,近くに寝そべってくつろぐ様子が本当に幸せそうです。

 

足で遊ばれるのが好き

手ではなくて,足でいじられるのがお気に入りのようです。

 私は

猫がとても大好きで,かわいくて可愛くて仕方がない人間

ではありません。

 猫族との同居も初めてではなく,

子供のころから実家にはネコがいました。

だから彼らとの距離は心得ています。

 お互いに干渉しない。

 このルールさえ守れば

しごく快適な生活を送ることができるのです。

 でもね,そうもいかないこともありますね。

 同居を始めたころは険悪な仲でした。

 私が食事やトイレの手入れをしているところをじっと見ているので,世話になっている自覚はあると思います。

ベッド争奪戦 

こんなことがありました。

 私の部屋は狭く,部屋を有効に使うためにソファーベッドを利用していました。

 普段はここに座ってローテーブルで飲食をしながら,映画を観たりしています。

 寝るときはソファーの背を倒し,かけ布団をかぶって寝ることが日常です。

 彼女もソファーを気に入っています。

ある日,目覚めると枕の横あたりが濡れていました。

 量から考えて私のよだれのはずはないし・・・・・・クサッ!!

 彼女のお小水だったのです。

 断っておきますが,いつも排便は大も小も猫トイレで必ずするのです。

バカではないことは分かります。

 ではなぜベッドにするのでしょう?

調べたところ,どうもテリトリーマーキングのようです。

「ここは私の縄張りよ。入ってこないでね。」

 そういわれてもベッドはひとつ。

 目には目を,歯には歯を。

 報復措置としてこちらもベッドに小便をしてもよさそうなものですが,さすがに人間族としての理性がこれをはばみます。

 というか,結局私があとしまつをすることになるから,仕返しはできません。

これがもとでケンカになります。

ネコの尿は非常に臭いのです。

犬と比べ物にならないくらいにクサイ!!

 鼻がひん曲がるくらい臭いのです。

 何度拭いてもにおいは消えない。

 頻繫にやられると参ってしまうので,強く叱って追いかけまわします。

「 やってすぐなら当人?もわかるだろう。

 でも時間がたっていると,なんで叱られているのか分らんだろうな。」

と思いながらもケジメをつけるため追いかけまわす。

尿をふいたクサイ雑巾を押しつけて。

「おまえも臭いとこで,寝たないやろ!」

と通じることのない人間語でどなりながら追いかけまわします。

 それからは滅多にすることは,なくなりました。

でも・・・たまに思い出したようにします。

そしてまたケンカが始まるのです。

猫と男の追いかけっこ

甘えることもある

 そんな間柄だったのですが,彼女も甘えてくることがありました。

ごつんと頭を私の足に押しつけてくるのです。

 いけ好かないオッサンでも,この世界では同居者は私だけ。

 どうにもならない世の無常を感じたときに,甘えたくなるのでしょう。

 でも,このときに手で頭をなぜようとするものなら,鋭い爪の一閃が走り,私は痛い思いをすることとなります。

 「なんやねん!

かまって欲しいとちゃうんかい!?」

と引っかかれた手を押さえながら毒づく。

 さんざん気を持たせたあげく,そでにする性悪女にもてあそばれている気分です。

なぜか手の愛撫を彼女は喜びません。

手を頭にもっていくと身を後じらせます。

異様に手を警戒して怖がるのです。

 何回か引っかかれて,足で頭を小突くように撫でると喜ぶことが分かりました。

 ソファーやPCチェアに座って両足で頭やほほをさすったり,顔や頭を挟み込んでもみくちゃにすると,とても喜ぶのです。

 そして何度も頭を押しつけてくるのでした。

そのうちゴロゴロとのどを鳴らし出し,仰向けに寝てしまいます。

 ここからの動作がすこし面白い。

 私に向かって手(前足)を伸ばし,手のひらを向けたあとに手首を曲げます。

これを左右交互にゆっくりとするのです。

 つまりオイデオイデの動作にそっくり。

まるで「こっちへ来て」と呼ばれているようです。

山本リンダか安西マリア,夏木マリか?(フルイ(^-^;)

 これまでの何匹かの猫との暮らしで経験したことがなかったけれど,この動作が古今からの化け猫伝説につながったのでしょうか?

手の恐怖

元の飼い主の娘と会ったときにわかりました・・・。

 どうも子猫のときに娘のダンナに顔をわしづかみにされ,口が開けられないイタズラをよくされていたらしいのです。

 どのくらいの間,いたずらをされていたのかはわからりません。

 でも,その怖がりざまを見てきている私には,彼女にとってはトラウマになるくらいの恐怖であったことは想像できます。

 今では両目の間をかいたり,耳のつけ根をかかれると喜ぶくらいには親しくなりました。

足ほどではありませんが。

変わったねこであったココ。

  そんな彼女はもういません・・・・・。

獣医にて

やっと続きを書きました。

イラストもかなり増やしました。

読んでいただけると幸いです。

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